スペインのサッカー バスクのサッカー全般

史上初 国王杯決勝バスクダービー

1年前、国王杯(コパ・デル・レイ)準決勝。

アスレッチック・ビルバオvsグラナダ、もう一つのカードはレアル・ソシエダvsミランデス。これだけを聞くとサッカーに詳しくない人からするとどこのチームだよ、となるかもしれませんね。

ちなみにこの準決勝の日は、ビルバオ地域のクラブのサッカーの練習はキックオフ時間には終わって家にいられるようにほぼ全てのクラブで調整されていました。別に示し合わせたり通達があったわけではありませんが、自然とそうなったということです。なぜなら、みんな試合が見たいから。

私も練習を終え、スタジアムへと足を運んだことを覚えています。

そして準決勝の結果、アスレチック・ビルバオとレアル・ソシエダが勝利し、決勝に駒を進めることが決定。

この瞬間まず街はお祭り騒ぎ、そして何より大事なのはこの2つのクラブが決勝を戦うことになったということ。

どういうことかというと、両クラブともバスクに拠点を置くチーム同士で、リーグ発足当初から約100年間もの間ライバル同士であり、同じバスクということもあり友情もあるチーム同士が歴史上初めて決勝の舞台に立ち戦うダービーになったということです。

ダービーと聞くと、バチバチの削り合いで喧嘩をしたり、ファン同士も衝突を繰り広げるイメージがありますが、バスクダービーの場合ちょっと違います。

例えばこんな感じです。

リーグ戦でダービーになった時、ビルバオのサポーターが応援の一つとして「ソシエダは〇〇だ!!」と汚い言葉のチャント(応援)をし、それに対してソシエダも「お前らも〇〇だろうが」とやり返すのですが、その後、「けど俺たち同じバスク人だからな」と仲直りのチャントが広がるのです。

バスク人という結束が前提にあるため、いくらいがみ合ったとしても、最終的には仲直り、そういう友達であり、ライバルという関係です。

決勝の舞台はバスクから遠く離れたセビージャでの開催。それにもかかわらずバスツアーが組まれ、もうみんないく気満々でした。しかし、コロナにより延期が決定。それが延びに延びて先週1年越しで決勝が行われました。

今回はバスクにサッカーをしにきて住んでいる身として、記事として取り上げなければいけないという責務を感じつつ、綴らせていただきます。

国王杯の歴史

引用元:https://as01.epimg.net/futbol/imagenes/2021/01/22/copa_del_rey/1611316860_888021_1611317389_noticia_normal.jpg

そもそも国王杯(コパ・デル・レイ)とは何かというと、1903年から行われており、今年で118年目となるスペインで最古のカップ戦です。リーガエスパニョーラが90年の歴史ですが、それよりも古くから行われている大会です。

日本でいう天皇杯ですね。

この大会に優勝すると何があるかというと、もちろんカップや優勝賞金は当然ですが、来年度のヨーロッパリーグの出場権が獲得できるという大切な大会でもあります。

さて、その国王杯ですが、最も優勝回数が多いクラブはどこだと思いますか?想像に難くないですね、バルセロナです。30回の優勝を誇っています。準優勝は12回、つまり118年の歴史でなんと42回も決勝に進出しているということです。

では2番目に優勝回数の多いクラブはどこでしょうか?そうですね、レアル・マドリードと答えているのではないでしょうか?不正解です。なんと、2番目はアスレチック・ビルバオなのです。優勝回数23回、準優勝14回、合計37回決勝を戦っているということになります。すごいですよね、それだけ歴史があり、なおかつ強いクラブであるということです。

街が変わる

「そろそろ決勝が近づいてきたな、来週か」と街を歩いていると国王杯のことについて話している人の声を聞くことが多くなりました。

ちなみに私の住んでいるビルバオは当然ですが、アスレチック・ビルバオの本拠地であり、赤色と白色のカラーが特徴のチームです。一方レアル・ソシエダはサンセバスチャンというバスクの西側に拠点を置くチームで青と白色のチームカラーです。

決勝2週間前、街を歩いているとビルバオのユニフォームを着て歩いている人が見受けられるように。そしてベランダからビルバオの旗を掲げている人もちらほら。

噂には聞いていたのですが、ビルバオというのは世界的にみてもアスレチック・ビルバオ愛に溢れている稀な地域であり、クラブであると。それをこの後目の当たりにすることに。

1週間前、ユニフォームを着ている人の数はどんどん増えていき、そして三日前にはもうこんな感じです。

ベランダにはアスレチックビルバオの旗や赤白の段幕がたなびき、スーパーに行ってもアスレチックビルバオの音楽が鳴り響き、赤白カラーの垂れ幕が。街全体が応援しているんですね。そして街ゆく人々は当然と言わんばかりにユニフォーム。

驚きだったのはおじいちゃん、おばあちゃん、そしてわんちゃんまでもがユニフォームを着て歩いていることです。若い女性達もユニフォームを着て歩いている。これは衝撃的な光景でした。

日本ではまずあり得ませんし、他の地域でもここまで街がサッカーによって変わっていく、いやサッカーというよりも1つのクラブによって変わっていくというものは見たことがありません。

以前アスレチック・ビルバオの大ファンである方と話している時にこんなことを言っていたのを思い出します。「アスレチック・ビルバオは我々バスク人にとっての象徴であり、魂そのものなんだ」と。なるほどと今回この街が変わっていく様子を見てようやくその言葉の意味を理解できました。

試合のゆくえ

さて、試合当日。キックオフ時間は21:30。これが何を意味するかというと、家で観戦しなさいというメッセージです。なぜならば外出は22:00までの制限、バルは20:00までしか開いていませんので、必然的に家で見るしかないのです。

もし昼間の時間などにしていたら、街に人が溢れ返り大変なことになっていたのは想像に難くないので、歴史的な試合なだけ少し残念ではありますが、コロナのことを考えると仕方のない決断だったようです。

しかし、夜にキックオフにもかかわらず昼間に人が街に溢れかえり、大変なお祭り騒ぎになっていました。三密どころの話ではありません。もうみんな我慢できなかったんでしょうね、この対戦カードでしかも決勝戦。街に出てアスレチックと叫ばずにはいられない、それが文化です。

試合時間を迎え、キックオフ。

ここでは試合内容の詳細は書きませんが、非常に緊張感のある、お互いに背負うものが大きいと感じさせられる試合でした。

結果としてはレアル・ソシエダが10で勝利を飾り、1987年以来、3回目のカップを手にしました。アスレチック・ビルバオも1984年以来優勝から遠ざかっていただけに負けて涙する選手もいました。プロになって、負けて泣く。それだけこの試合への重みそして、街を背負って戦っているという重要性とそれだけのプレッシャーを抱えていたのでしょう。

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試合後、印象的だったシーンがあります。選手同士もそうですが、クラブの会長同士が熱い抱擁を交わしお互いの健闘を称え合っていたのです。そしてソシエダの会長は涙を浮かべていました。これをみた時「サッカーというのは、やはりすごいスポーツだな、美しいな」と感じさせられました。

自分の化身であり、魂であると感じているクラブ、そのクラブが勝って涙する、そして一方は負けて悔しい、絶望感すら味わう。しかしそれでも同じバスクにあり、永遠のライバルでありそして友であるチームの勝利を心から讃える。そこに美しさを感じました。またこれはバスクという独特の文化を持つ地域でないと起こり得ないものです。

バスクの有名な指導者の方がこのように言っていました。

「今回の決勝は、どちらが勝ったとしても讃えられるものだ。なぜならばバスクの勝利であるからだよ」と。

アスレチック・ビルバオは準優勝に終わりましたが、2週間後また決勝戦が待っています。今回の決勝は2021年度の国王杯の決勝です。対戦相手はバルセロナ。2週間の間に2度も国王杯決勝を戦うというのはこれも歴史上初めてのことですが、約37年ぶりの優勝を目指して、もう一度前を向いて戦ってくれることを期待しています。

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