スペインのサッカー スペインの育成年代

アスレチック・ビルバオのサッカー育成が世界に注目される理由

バスク州を代表するプロクラブ、アスレチック・ビルバオ。バスク人だけでチームを作るため、必然的に下部組織の育成に年間数億円もの大金を注ぎ込む世界的にも珍しいクラブです。

その育成のあり方は世界的にも注目を集めており、参考にしているクラブも多々あります。

今回は実際にアスレチックビルバオの関係者から得た情報を交えながらアスレチック・ビルバオの育成システムの5つのポイントを紐解いていきます。

①練習施設レサマの存在

U10の選手からトップチームまで全てのカテゴリーがトレーニングを行う施設、それがレサマ(LEZAMA)です。ビルバオ市内から電車で20分程度の場所にあるこの施設は、レサマという村の中にあり、落ち着いた環境の中でサッカーを行うことができます。

レサマはヨーロッパでも2番目に歴史のある総合練習施設で、その規模はなんと、天然芝4面(そのうち1面はスタジアム、2面はトップチームのみが使用する)、人工芝4面、7人制コート人工芝1面、キーパー専用コート1面、室内トレーニング場があります。

これだけの規模のトレーニング施設は日本では見ることはできませんね。

その整った環境でプレーをし、目標とする上のカテゴリーの選手を常に見ながら自分の現在地を知ることができる、この施設があることが育成に力を入れている証拠であり、ビルバオ中のサッカー選手がここでトレーニングをしたいと憧れる特別な場所にもなっています。

昔のサン・マメススタジアムのアーケードがお出迎え。レサマのシンボルです。

スタジアムではセカンドチームが試合をします

トップチームのトレーニング。公開かどうかはHPで確認できます。

育成年代の練習時間。ピッチと時間はレサマ内のバルに張り紙されているので確認を。

②ロッカールームで考える習慣化

ビルバオではプロクラブも街クラブもほとんどのチームが練習前に10~15分程度のミーティングを行います。

そこで練習の内容を伝えたり、前の試合を振り返ったりと選手との1つのコミュニケーションであり共有する大切な時間です。

アスレチックビルバオの育成では、その時間を特に大切にしています。そこで行われるのはコーチが一方的に話をするのではなく、選手が考えて発言する力をつけるための場として与えられています。

具体的に何をしているかというと、まず当日行うトレーニングメニューをロッカールームのホワイトボードに貼り出します。

それをミーティング前に選手が見て、何を意識して行うためのトレーニングか、ポイントを書き出していきます。その後、コーチが入ってきてミーティングがスタートすると、質問責めが始まります。

コーチ:このトレーニングではどんな技術が必要かな?

選手:マークを外す動きが必要だと思う

コーチ:それってどんな動きがある?

選手:プルアウェイの動きとか

コーチ:じゃあそれはいつのタイミングで行うの?

選手:味方が顔を上げたタイミングとか

コーチ:そうだね、ではこのトレーニングではそこを意識してやろうね。

このようにコーチが書いた選手に対してなぜこれが必要なのか、どのようなシチュエーションでなど、細かく質問し、それに対して他の選手も意見を述べていきます。

このミーティングを行うことによって、練習に対しての意識を高めるともに、皆で目的を共有し、さらに考えて行うことを習慣化させています。これを毎日行うのですからそれは力がついていき、後々差となって現れていきます。

③テーマを設定したトレーニング

アスレチックビルバオのトレーニングは、各年代までに到達させたい個人技術、戦術をリスト化し、それを年、月単位、週単位に落とし込んで練習が組み立てられています。

なので、練習は次のリーグの相手を想定した練習ではなく、あくまで自分達の成長だけを考えて行われています。(U16以上では週末の相手を想定して行います)

トレーニングメニュー自体も各カテゴリーのコーチが全て考えるのではなく、メソッド部門からコンセプトとトレーニング例を提示され、それをベースにトレーニングを行うという方法がとられています。

それゆえにクラブのフィロソフィーや成長目標が指導者によってぶれないようにしていると言えます。

具体的な練習例で言うと、テーマがヘディングの場合、ヘディングでクリアする、シュートをするという2つの大きな現象を、様々な位置からのクロスから、イーブンボールからなど状況を設定して行います。

その中で必要な知識や技術を教えていくというのがトレーニングの方法です。

毎回テーマが明確に設定されているため、トレーニングの意図がわかりやすく、技術の習得も向上するという考えのもと行われています。

また、チーム全体でのテーマだけでなく、個人個人に対してもプロジェクトが進行されているため、両方でのアプローチで選手の成長を支えています。

④1カテゴリー上でのプレー

アスレチック・ビルバオはエリートたちが集まったチームであり、それゆえ身体、技術レベルともにトップクラスの素質を持っています。

彼らの成長を促すために、毎週末あるリーグ戦では全てのカテゴリーで1つ上の年代のチームが集まるリーグでプレーしています。

例えばU13の年代のアスレチックの選手は、U14の年代が集まる上位リーグに出ているというイメージです。1歳の違いは特に育成年代ではかなりの差となって現れてきます。

あえて上の年代でプレーさせることによって、プレースピードや身体的な強度の高い中で試合ができます。

また、日本でよくあると思いますが、身体的に優れた選手がその特徴だけでプレーし、高校年代になったら周りが追いついて活躍できなくなるということはよくあります。

上の年代と試合をすることで身体的に劣ってしまう中でいかにプレーをするか、小さい頃から体だけに頼った選手にならないようにするという効果もあります。

⑤街クラブへの指導者派遣

アスレチック・ビルバオの育成がうまくいく理由の1つとして、アスレチック・ビルバオ所属のコーチがビルバオ (ビスカヤ県)の各クラブに派遣されているということが挙げられます。

これは面白いシステムで、街クラブを3つにランク分けし、上位クラブにはより多くの資金の提供及び、コーチの派遣を行います。

上位クラブで週2回程度、中位で月1回程度、下位はそれ以下という形でコーチが派遣され、主にU12より下のカテゴリーで各クラブのコーチのコーチとしてアドバイスを行います。

もちろん資金を提供したりコーチを派遣するのは慈善事業で行っているのではなく、そこには狙いがあります。

まず、資金提供の狙いは、クラブをサポートすることによって、そのクラブの優秀な選手をアスレチックビルバオに送るという約束をしています。

この約束によって、他のプロクラブに行くということをブロックできるのです。選手確保には非常に大事なことです。

次にコーチ派遣には2つの狙いがあります。1つは各クラブのコーチの質を向上させていくことによって、街全体のサッカーのレベル向上につながる、そうすると良い選手が育つという循環を生み出すためです。

そしてもう1つの理由は、スカウティングをするためです。直接有力な街クラブの選手を週2回見る、そうすることによってただ試合を見て光っていたからスカウトするような単純な人材確保ではなく、練習態度、技術レベル、保護者などトータル的に観察する中でアスレチックビルバオ に適した人材を発掘することができます。

このスカウティング網を広げるというのは素晴らしいアイデアです。ちなみに他のプロクラブはそこまで行っていません。絶対的なビルバオの象徴であるアスレチックだからできることとも言えます。

まとめ

アスレチック・ビルバオが選手を育成するためには、トレーニングの方法論だけではなく、良い選手をいかに獲得するかということの大切さがわかるかと思います。

選手を獲得した上で一貫したクラブの指導を行う、この相乗効果がアスレチックビルバオの育成の根幹にあるところです。日本の指導現場で全てが使えるものではありませんが、ロッカールームの場面など使えるところはぜひ参考にしていただければと思います。

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